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日常と非日常の生活。

日常の事象、非日常の現象を書いていきます

メリアに花を

八月は何度も繰り返し来るんでしょう 巡る草木生い茂って揺蕩うまで過ごした

眺めていた雲が霞んで遠くなった ふわりふらり追いつけなくて佇むだけの僕だ

暮れに揺れた暁と香ばしいコンクリート 日の照る町の中揺らぐ陽炎を見つめていた

 

淡い淡い記憶の隅に 残る眷顧

灰色の夢

消える消えるプカプカ消える 君の香り泡沫のようだな

 

八月は何度も繰り返し来るんでしょう 眠る風に朝日の憧憬 浮かぶ雫日焼けた白紙

目覚めていた雲がいつの間にか近くに感じた

晴れた今日に逆さまの蝉 

少しだけ悔しくなった

 

「何度目の夏だろう」

 

日は翳り、蜩が鳴き、君の姿が途絶える。綺麗な影も風に乗るその香りも

「揺れている、誰のために?」

飾り付けられた髪、風と泳ぐ睫毛。砂の城で遊んだ手、水に怯えた足。

雨と跳ねる肌、幸せを得ようとした目。脆く儚い笑顔、取ってつけたような心臓。

 

蜃気楼はいつまでも彼女を教えてくれた。

 

陽炎は揺れる。欺瞞を背負い、記憶を掴む。

届くことのない言葉は次第に口から溢れていく。

夏を殺してしまったあの日に、また戻れたらいいのに。

「だから夏は嫌いなんだ」

辟易とする暑さ、朦朧とする意識。いっそ波と消えてしまおう。この花を手土産に。

水底へと消えてしまおう。綺麗に育つといいな。二人きりを口実に。

「君に似合う花を見つけたんだ」

スカートは揺れる

水面は光、太陽は水平線へ消える。そこにあるのは拙い一つの花と静寂だけ。

暮れに揺れた暁と、残照に飲み込まれた。

「一人じゃないよ」

嫋かに霞む月がいつも水中を照らす。

優良な画廊に飾られていた一輪の花も同じ場面で切り取られた。これで夏は終わりさ。

 

「素敵な名前だね」

 

「愛していたよ」

 

 

青い青い花弁は風に 吹かれ惑う行方知らずに

光り惹かれ集まり翳る 君の姿泡沫のよう

 

水中から見る町の隙間

「ユレウク」

淡々と流れる

いつだって底は青く未完成で

「mellia」

一輪手向けた

 

八月は何度も繰り返し来るんでしょう

八月は何度も霞んで遠くなるでしょう

八月は何度も。

 

 

2016/08/27